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絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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昨日からトリの場合を読み返しては(現実だ……)と確認する、ということを繰り返しています。
おかげさまでめちゃくちゃ久しぶりにトリチア書いた!!
書かずにはいられなかった!
でもトリチアというかトリが一人で反芻してる話です。


※羽鳥の場合ネタバレです






+ + + + + + + + + +



「羽鳥、あの書類明日までにできるか?」
「今進めているので今日にも書き上がると思います」
高野さんに返事をしながら黙々とパソコンのキーボードを叩く。
普段ならもう少しタイプミスがあるはずなのだが、今日のような状態だと気持ち悪いくらいにミスなく仕事が進んでいく。
心配性という性分のせいか、昔から仕事のことだけを考えている時よりも余所事に気をとられているときの方が集中力が上がるような気がする。
自分の気持ちが浮ついている自覚がある分、失敗をしてはいけないという制止力が自分の中で働くのかもしれない。
カタカタとキーボードを叩く音に合わせてディスプレイ上でスムーズにできていく書類を目で追いながら、本当に今の自分は浮かれているんだな、と呆れてしまった。


吉野が口でしてくれた。
「………」
駄目だ。
言葉にして考えると未だに衝撃が大きく、編集部にいるのに手で顔を覆いそうになってしまう。
本当に夢ですら考えたことがなかったのだ。
想いが伝わったら、恋人になることができたら。
そんな想像は散々してきた。
多感な思春期の頃からすでに恋愛対象として吉野のことが好きだったから、もっと性的なことを考えることも多くあった。
だから吉野と本当に恋人になれて抱くことができて、今でも夢なんじゃないかと思うことが多い。
けれど夢なんかじゃなく吉野は本当に俺の恋人でいてくれようとしてくれて、口では文句を言ったりすることも多いが抱き合うと素直に身体を委ねてくれる。
夢みたいだ、というのは言葉の綾なんかではなくて、いつ醒めてもおかしくないとすら思う。
今まで頭の中でしか想像できなかったようなことが吉野のおかげでどんどん現実になっていく幸福に、臆病な自分が追いつけていないと感じることも多い。
たぶん、自分が思っているよりもずっと吉野は俺とのことを色々考えていてくれたに違いない。
吉野を恋愛対象として見ながらも、どこか子供の頃のままだと考えていたせいか、最近は驚かされることが多いように感じる。
(吉野が口で……)
もう一度同じことを考えているうちに、書類は半分まで書き終えた。
念のため書き上げた部分を見返しているが、誤字も脱字もない。
近くで小野寺が、羽鳥さんすごい集中力ですね、と木佐に話しかけたのが聞こえた。



さて、いつから吉野はあれをしてくれるつもりだったのだろう、と考える。
無論、書類作成は続行中である。
脳内は悶々と先日の記憶を辿っているが、体はおそろしいほどに冷静なのが自分でもどうなっているんだと思う。
自己防衛のためにそういう機能が備わってしまったのかもしれない、などと余計なことも考えた。
何度も言うようだが、俺は今まで吉野がそんなことをしてくれるなんて夢にも考えたことがなかった。
それなのに、吉野の方から俺がやると言い出したのだ。
俺と付き合い始めるまで吉野は完全にストレートだった。
いや、今も俺と付き合ってくれているだけで性的嗜好が変わったわけではないと思う。
だから同性である俺を受け入れてくれるだけでも相当に抵抗があっただろうに、今では吉野の方から積極的にあれこれしてくれようとしているのだ。
嬉しくないはずがない。
むしろ嬉し過ぎて脳が受容できず戸惑わせてしまって吉野の機嫌を損ねてしまうのが申し訳ないくらいだった。
手でしてくれたことは何度かある。
これはどちらかと言えば俺からしてほしいと言い出したことだった。
けれどさすがに口でしてくれとは言えなかった。
あり得なさ過ぎて想像したことはなかったが、一応思い浮かべたことくらいはある。
しかし非現実過ぎてすぐに想像するのをやめてしまう、というのが実際だった。
吉野はいつだって俺の固くつまらない脳の想像を超えてくる。
思いがけないようなことで俺を喜ばせてくれる。
初めて感じた吉野の唇、舌の感触は一生忘れないことだろう。
緊張でこわばった顔、たどたどしく施される愛撫、だんだんとうっとりとしてくる表情。
きっととても勇気が要ったことだと思う。
今までの吉野だったら、俺が頼んでも絶対無理だと言ったはずだ。
でも、最近の吉野は変わろうとしてくれているのがわかる。
自分で言うと自惚れているようで気が引けるが、俺のため、だ。
俺の恋人、お前は俺のもの、と言葉にして言ってくれるたびに幸福で胸が締め付けられるようだった。
言葉にして好意を告げてくれるのも、同性である俺にああいう行為をしてくれるのも、吉野にとってものすごく勇気が必要なことだというのは想像に難くない。
だから俺はそれに応えなければいけないと思う。
(俺も変わらなくちゃいけない)
たぶん土壇場で勇気を出せる吉野と比べて、俺の方がずっと卑屈で臆病だ。
でも、いつまでもそうも言っていられない。
俺は吉野とずっといたいと思う。
吉野の迷惑になるならいつでも身を引く覚悟だと思ってきたけれど、吉野の体当たりの好意からしてみれば、俺が考えてきたそれは覚悟ではなくただの逃げなのではないだろうか。
もっと自信を持って吉野を愛することのできる人間になりたい。
自分の狭量さで吉野を不安にさせたり傷つけたりはもうしたくない。
トリがいないと生きていけないと吉野はよく冗談ともつかない口調で言ってくれるが、やっぱり俺は吉野には敵わないと思う。



自分でも気持ち悪いくらいのスピードで仕上げた書類は、高野さんに一発OKをもらった。
「おつかれさん。何かいいことあったか、羽鳥?」
「………!?」
「羽鳥さん、全っ然いつも通りというか、いつも以上に仕事の鬼って感じでしたよ……?」
俺より先に小野寺の方が怪訝そうに口を開いた。
「こいつけっこう顔に出やすいんだよ。ま、上司としてはその方がやりやすいけどな」

吉野にも敵わないが、高野さんにも別の意味で敵わない。
とりあえず会釈をして自分の席に戻り、真っ黒になっていたパソコンのモニターに映る自分の顔を一瞥した。







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