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絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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ミニマムで秋彦の弘樹観。
12巻のお話です。

「続きを読む」からどうぞ。

拍手[2回]


+ + + + + + + + + +
「昨日の夜、変な奴に会ったんだけどさー。」
「……無事?」
「や、そういう変じゃなくてだな。」


今日も弘樹は学校の鞄に加えて、学習塾のバッグを抱えて登校してきた。
昨日はピアノ教室、一昨日は水泳。
忙しいことだ。
そういえば初めて俺が弘樹に会ったときも、こいつは剣道の道着を着ていた。
しかもすごい表情をしていた。
最初はわけがわからなかったが次第に弘樹のことがわかってくると、なるほどあの時も習い事がイヤで飛び出してきたんだな、と納得がいった。

ほんとにこいつは難儀な性格をしている。
習い事がイヤでイヤで仕方がないくせに、どうやっても止められないのだ。
親から止めるなと言われているのかとも思ったが、親からも止めなさいと言われているらしい。
まあ、子供がこんな状態だったら普通はそう言うのではないだろうか。
だけれども何で止めないのかと聞いたら、弘樹は高らかに言い放った。

俺のプライドの問題だ、と。

そう宣言した弘樹の顔は実に満足そうだった。
こんな弘樹に俺が何を言えるだろうか。
とりあえず頑張れ、と頭をぽんぽんしてやったら意味不明の言葉を叫びながら真っ赤になってしまった。
このように冷めた目で弘樹を見ているように見えるかもしれないが、別に俺は弘樹のことを馬鹿にしているわけではない。
むしろちょっとすごいヤツ、だと思っている。
それを上手く伝える術に俺が長けているとは思えないのであまり口にはしないが、あいつの頑張りは学校で軽々しく目標に掲げるような「がんばりましょう」とはだいぶ違うと思う。
昔どこかの国の偉い先生は、悩んで悩んで憤慨するほど問題について考えるような人間にしか教えを授けないと言ったそうだ。
そこまで思いつめて、初めて学問の扉が開くのだという。
学問というのはそこまでしなければいけないのかと感心したものだけど、それを身近で友人が体現しているのだから驚きだ。
小学生にしてここまで自分で自分を追い詰めることができるのは何らかの才能ではないのだろうか。
実に難儀ではあるけれど、これは確実に弘樹のすごいところの一つだと思う。


俺が何より感心しているのは、自分がこうして弘樹のことを素直にすごいと思えることだ。
ふと、自分以外の宇佐見家の人間のことを考えてみる。
たぶん、彼らは弘樹のような人間を泥臭いと笑うのではないか。
無駄なことならばやらなければいい。
必要なことならば自分の心なぞ鑑みずに行うべきだ。
周りにはそんな人間ばかりだったから、泣いたり笑ったりしながら習い事を続けている弘樹のことはすごく新鮮だった。
弘樹といっしょにいると、自分が宇佐見家の中で異端なものを持っていると強く感じる。
だけどそれは決して嫌なものではない。
たまにそれを持っていることで寂しくて持て余してしまうこともあるけれど、弘樹と知り合えてよかったと思えるそれは、きっと悪いものなんかではないはずだ。


「で、変な奴って?」
「家出少年。」

昨日の夜、ピアノ教室から帰る途中に家出少年と会ったそうだ。
「しかもそいつ、俺より年下なんだぜ?すごくねー?!」
そう言ってまくしたてる弘樹の目はキラキラしていて、本当にこいつの心の琴線には何が触れるかわからないものだ。
夜で、子供一人で、自転車で、それがパンクしてて、と話しまくる弘樹は興奮していて要領を得なかったが、
要するに自分より年下の子供が自転車もパンクするくらい遠くまで家出をしてきていたことが「ちょっとかっこよかった」らしい。
「何?弘樹も家出したいの?」
「ええー、だって家出って男のロマンだろ!!」
「じゃあ、今度うち来る?」
「それじゃただのお泊りじゃねーかっ!」
何かまた妙な本を読んで感化されたのか、今度は理想の男の家出について語り始めた。
たぶん弘樹の周りにはなんだかキラキラしたものが満ちていて、毎日なんだかんだと愚痴を言いながらもまっすぐ突っ走って行けるのは、弘樹の目にはたくさんのキラキラしたものが映っているからなんだと思う。
もしかしたらそれは普通の子供ならみんなそうなのかもしれないけれど、こんな風にまぶしい世界のの端を見せてくれる弘樹といっしょにいるのは本当に飽きない。
家で一人で本を読んでいた頃には知らなかった世界だ。
くるくるとよく表情の変わる弘樹の顔を眺めていれば3秒と経たずに怒鳴られるけれど、不思議にこれが止められない。

「それでどうしたの、その子は。」
「通報した。さくっと。」
「言ってることとやってることとムジュンが……。」
「いやいやいやいや!」
家出にはちょっと憧れるけど、そこはおまわりさんに知らせるっていうのが筋だろう、と弘樹は胸を張った。
「そこで情にほだされないのがオトナってもんだ!」
そして、無計画に家を飛び出すガキとはそこが違うんだと言って自分で満足げに頷いていた。
曰く、年下の子供の安全を確保するのがオトナの務めらしい。

「まっ、子供にだって家出したくなる理由の一つや二つあるだろうからわけは聞かなかったけどなー。」

アメをあげておまわりさんに引き渡したそうだ。
まったく面倒見がいいのか悪いのか。
ここで自分は誉めるべきなのか諭すべきなのかわからないけれど、とりあえず今日も弘樹は楽しそうで何よりだ。


「その子もたぶん、」
「うん?」
「弘樹のこと、変な奴に会ったって思ってると思う。」
「どーいう意味だっ!!」




たまたま美咲を迎えに行ったときに弘樹と会い、どこぞのお土産だという得体の知れないキャンディーをもらった。
(美咲に食べさせたら悶絶して倒れた。)
弘樹からキャンディーの袋を受け取りながら、ふと昔あいつが出会ったという家出少年の話を思い出した。
あの頃から押しに弱いというか情にほだされやすいというか、そんな性格はあまり変わっていないようだ。
おかげで体調の悪い俺の前で延々のろけてくれるほど幸せそうで、まあ結構なことである。
あの話は弘樹の性格を端的にあらわしているので、機会があればどこかで弘樹のツレに披露してやってもいいと思っている。






END
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