絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
春コミで発行する新刊サンプルです。
本に注意書きつけるの忘れちゃったので、一話目を丸々サンプルにしました。
こういう感じの話がだんだんエスカレートして七話続く感じの本になります。
「続きを読む」からどうぞ。
本に注意書きつけるの忘れちゃったので、一話目を丸々サンプルにしました。
こういう感じの話がだんだんエスカレートして七話続く感じの本になります。
「続きを読む」からどうぞ。
+ + + + + + + + + +
羽鳥芳雪は吉野千秋のことが好きであった。
羽鳥と吉野は同性の幼なじみである。
生まれた時からどこへ行くにも何をするにもいっしょで、現在も仲良く同じ中学の同じクラスだった。
ある日、いつものように吉野は羽鳥の席へ向かい、お願い事をした。
曰く、明日までの課題が終わっていないので手伝ってほしい、とのことだ。
羽鳥がこれを断るはずもない。
こうして放課後は二人連れ立って羽鳥家に帰宅したのだった。
「なーなー、トリってこの前彼女と別れたって言ってたよな」
「口はいいから手を動かせ」
羽鳥の部屋で課題をこなしている最中も吉野のおしゃべりは止まらない。
教科書のページを繰りながら該当箇所を探してやっている羽鳥は、そんな吉野を叱りつける。
どうしてこんな世話のかかる友人を好きになってしまったのかと思い悩んでも、こればかりはどうしようもなかった。
課題のヒントを与えるたびに嬉しそうな顔でありがとうと言ってもらえるだけで、吉野のことを甘やかしてしまう。
自分に呆れながらも、羽鳥は吉野の課題に付き合った。
「じゃあさ、キスとかしたりしたの?」
「………なに、急に」
「や、ちょっとした好奇心というか」
どうやら吉野の周囲にいる友人たちでそんな話題になったらしい。
ふーん、とか、へー、とか言いながら聞いていた吉野は、幼なじみのその手の話に好奇心を持ったというわけだ。
「初めて彼女とちゅーしたっていう奴が、なんか話しててさあ」
「へえ」
「トリは興味ない?」
「……ない…こともない」
正直、羽鳥にとって女の子とのキスはそれほど興味のあることではなかった。
けれど、目の前にいる友人の唇に触れてみたいという気持ちが最近芽生え始めてきたところだ。
曖昧な返事で羽鳥がお茶を濁すと、テーブル越しに吉野がぐいと顔を近付けてきた。
「じゃあ、俺とキスしてみない?」
「………はあ?」
呆れ顔の羽鳥とは対照的に、吉野はどこまでも大真面目だった。
「俺もちょっと興味あるけど彼女とかいないし」
「ちょ、ちょっと待て」
吉野が本気で羽鳥とキスをしようとしていることがわかり、羽鳥は慌てた。
確かに願望はあるが、実際そんなことを言われたらどうすればいいかわからない。
素直に申し出を受けてよいものだろうか。
しかしこの千載一遇のチャンスを逃せば次はないかもしれない。
「俺でいいのか?」
「うん、なんかトリとならできそうかなって」
そう言ったかと思うと、吉野は席を立ち、羽鳥の隣に寄ってきた。
「ほんとに、するぞ」
「うん」
覚悟を決めた羽鳥は、軽く吉野の肩に手をかけた。
吉野は目をつむって羽鳥の唇を待っている。
その表情がかわいい、と思った瞬間、羽鳥の心臓は大きく跳ねた。
「んっ……」
無意識に吉野の口から吐息が漏れる。
初めて触れる吉野の唇は柔らかく、慎重に羽鳥は唇を重ねた。
ぷは、と息を吸いながら、どちらともなく唇を離した。
触れるだけのキスだったけれど、羽鳥にとっては目も眩むような出来事だった。
「ねえ、トリ」
羽鳥の服のすそを握って、吉野が言う。
「……なんかふわってなった……気持ちよかったかも」
「………ッ」
うつむきながら頬を紅く染め、もう一回、と吉野がつぶやく。
羽鳥とてやぶさかではない。
「一回じゃ済まないかもしれないぞ」
「うん、いいよ」
言うが早いか、今度は吉野の方から唇を押し当ててきた。
羽鳥はそれを抱き留めるように、そっと床へ押し倒した。
それでも吉野は羽鳥にしがみついて離れようとはしなかった。
「千秋……」
「芳雪……」
そして二人の身体は重なり合い、
*****
「もしもし、トリ?」
電話を取ると、悪怯れた様子もない吉野の声が飛び込んできた。
課題を手伝ってくれと言った吉野は、放課後になると羽鳥に手を合わせてこう言ったのだった。
ごめん、優と約束してたんだ、と。
別に自分の課題ではないのでどうなろうが関係ない、と家に帰って妄想に耽っていたところ、この電話だった。
「どうした」
「いや、トリのことだから課題の心配してくれてるかなって」
「……別にしてない」
最大限の不機嫌をあらわしてそう言うと、吉野は明るく言った。
「課題は優に手伝ってもらったから!」
「…………」
がちゃんと受話器を置き、羽鳥は深いため息をついた。
報われない想いを抱える羽鳥芳雪・十五歳の時であった。
羽鳥と吉野は同性の幼なじみである。
生まれた時からどこへ行くにも何をするにもいっしょで、現在も仲良く同じ中学の同じクラスだった。
ある日、いつものように吉野は羽鳥の席へ向かい、お願い事をした。
曰く、明日までの課題が終わっていないので手伝ってほしい、とのことだ。
羽鳥がこれを断るはずもない。
こうして放課後は二人連れ立って羽鳥家に帰宅したのだった。
「なーなー、トリってこの前彼女と別れたって言ってたよな」
「口はいいから手を動かせ」
羽鳥の部屋で課題をこなしている最中も吉野のおしゃべりは止まらない。
教科書のページを繰りながら該当箇所を探してやっている羽鳥は、そんな吉野を叱りつける。
どうしてこんな世話のかかる友人を好きになってしまったのかと思い悩んでも、こればかりはどうしようもなかった。
課題のヒントを与えるたびに嬉しそうな顔でありがとうと言ってもらえるだけで、吉野のことを甘やかしてしまう。
自分に呆れながらも、羽鳥は吉野の課題に付き合った。
「じゃあさ、キスとかしたりしたの?」
「………なに、急に」
「や、ちょっとした好奇心というか」
どうやら吉野の周囲にいる友人たちでそんな話題になったらしい。
ふーん、とか、へー、とか言いながら聞いていた吉野は、幼なじみのその手の話に好奇心を持ったというわけだ。
「初めて彼女とちゅーしたっていう奴が、なんか話しててさあ」
「へえ」
「トリは興味ない?」
「……ない…こともない」
正直、羽鳥にとって女の子とのキスはそれほど興味のあることではなかった。
けれど、目の前にいる友人の唇に触れてみたいという気持ちが最近芽生え始めてきたところだ。
曖昧な返事で羽鳥がお茶を濁すと、テーブル越しに吉野がぐいと顔を近付けてきた。
「じゃあ、俺とキスしてみない?」
「………はあ?」
呆れ顔の羽鳥とは対照的に、吉野はどこまでも大真面目だった。
「俺もちょっと興味あるけど彼女とかいないし」
「ちょ、ちょっと待て」
吉野が本気で羽鳥とキスをしようとしていることがわかり、羽鳥は慌てた。
確かに願望はあるが、実際そんなことを言われたらどうすればいいかわからない。
素直に申し出を受けてよいものだろうか。
しかしこの千載一遇のチャンスを逃せば次はないかもしれない。
「俺でいいのか?」
「うん、なんかトリとならできそうかなって」
そう言ったかと思うと、吉野は席を立ち、羽鳥の隣に寄ってきた。
「ほんとに、するぞ」
「うん」
覚悟を決めた羽鳥は、軽く吉野の肩に手をかけた。
吉野は目をつむって羽鳥の唇を待っている。
その表情がかわいい、と思った瞬間、羽鳥の心臓は大きく跳ねた。
「んっ……」
無意識に吉野の口から吐息が漏れる。
初めて触れる吉野の唇は柔らかく、慎重に羽鳥は唇を重ねた。
ぷは、と息を吸いながら、どちらともなく唇を離した。
触れるだけのキスだったけれど、羽鳥にとっては目も眩むような出来事だった。
「ねえ、トリ」
羽鳥の服のすそを握って、吉野が言う。
「……なんかふわってなった……気持ちよかったかも」
「………ッ」
うつむきながら頬を紅く染め、もう一回、と吉野がつぶやく。
羽鳥とてやぶさかではない。
「一回じゃ済まないかもしれないぞ」
「うん、いいよ」
言うが早いか、今度は吉野の方から唇を押し当ててきた。
羽鳥はそれを抱き留めるように、そっと床へ押し倒した。
それでも吉野は羽鳥にしがみついて離れようとはしなかった。
「千秋……」
「芳雪……」
そして二人の身体は重なり合い、
*****
「もしもし、トリ?」
電話を取ると、悪怯れた様子もない吉野の声が飛び込んできた。
課題を手伝ってくれと言った吉野は、放課後になると羽鳥に手を合わせてこう言ったのだった。
ごめん、優と約束してたんだ、と。
別に自分の課題ではないのでどうなろうが関係ない、と家に帰って妄想に耽っていたところ、この電話だった。
「どうした」
「いや、トリのことだから課題の心配してくれてるかなって」
「……別にしてない」
最大限の不機嫌をあらわしてそう言うと、吉野は明るく言った。
「課題は優に手伝ってもらったから!」
「…………」
がちゃんと受話器を置き、羽鳥は深いため息をついた。
報われない想いを抱える羽鳥芳雪・十五歳の時であった。
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