絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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人にはパーソナルスペースというものがあり、一定の距離の内側に他人が入ってくると不快感を感じるという空間のことだそうだ。なるほど確かにどんな相手でもある程度の物理的な距離はとるだろうし、遠慮なしに距離を縮めてこようとする相手には警戒心を持ってしまう。防御として必要な間隔なのだろう。しかし吉野を見ていると、あいつにはパーソナルスペースが欠落しているのではないかと思うことがある。漫画家になって以来あいつの周囲にいるのは俺や柳瀬といったごく親しい人間ばかりになってしまったので、たまに他人に会う機会があると必要以上に怯え、逆に今度は見ていて不安になるほどに吉野は俺や柳瀬を拒まないのである。まったく逆の態度に見えて、結局他人に対する構えというものをしていないからそうなるのだ。仕事でどうしても親しい人間以外と顔を合わせなくてはいけない場合もあるのに逃げ回っているのは俺としても困るし、顔に触れたり抱きついたり柳瀬にそういったことを許しているのを見ると非常に腹が立った。むしろ後者の方が俺にとっては重要な問題だった。百歩譲って柳瀬の特別な好意に気付いていないのだとしてもあまりに防御力に欠けていると思わざるを得ない。もちろん俺がそんなことを言ったところで、自分のことを棚に上げて、だが。吉野が俺に対して欠片も警戒心を抱いていないことは自明だったけれど、さすがに身体を許すことはその延長ではないだろうと付き合い始めてからも俺はつまらないことを考えてしまう。いくらパーソナルスペースが狭いからといって、身体の内側にまで入ってくることはまた別の問題だ。抱きつくのとはわけが違う。俺も最初のうちは、これまでのスキンシップの続きのようなものでなんとなく俺を受け入れてしまったのではないかという疑心にかられたこともあった。そのせいでどこまで内側に侵入しても許されるのか試すような真似をしてしまったこともある。今考えると馬鹿みたいだが、それでも幼馴染の延長ではないという確かな線引きがほしいと焦っていたのではないかと思う。このことについては吉野自身の口から、同情や勘違いで同性とやれるかという大変男前な台詞をいただいたことがあるので、そのあたりのボーダーラインはあるらしい。(ないと今度は俺が困るのだが。)たぶん吉野自身もあまり深く考えたことはないのだろう。まだまだ不安は残るけれど、とりあえずはそのマイナスな距離のパーソナルスペースは俺だけのものだと甘受させてもらおうと思う。そんな俺の思惑などまったく知りませんよというような顔をして腕の中で眠る吉野の頬を撫でれば無防備は寝顔で身体を寄せてきて、まったく呑気なものだ。吉野にとって一番危険な男が吉野自身の内側にいるのだから防御を身に着けようとしないのも当然か、と俺は幸福のため息をついた。
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