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絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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下の記事派生の短文。
ダブパロかつ悲恋です。

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いつの間にか、あなたの背を追い越していた。



***

初めて会ったとき、その人は俺を知っていると言った。
「どこかで会いましたか。」
「いいや、どこでも。」
「?」
まだ幼かったからその人の言っていることがおかしいとは思わなかったのだ。
ただ、公園でいっしょにブランコに乗ってくれて、それがとても嬉しかった。
そうして、俺は実はもらわれっ子なんですよ、とか、将来夢があるんです、とか他愛もない話を聞いてくれた。
「野分ならきっといい医者になる。」
夕日に目を細めながらその人は言った。

暗くなるからもう帰りな、と言う彼に最期に名前を聞いた。
「……ヒロ、だ。」
「ヒロさん、また会えますか。」
「ああ、お前が会いたい時に。」



それからは俺の人生には常にヒロさんという光があった。
ヒロさんがいるから、俺はどんなことでも頑張れる。
そう思っていた。

志望校の合格通知が届いた日も、真っ先にヒロさんに見せに走った。
ヒロさんはいつもの場所で俺を待っていてくれる。
「よかったな。すごいじゃねーか。」
「ヒロさんが応援してくれたおかげです。」
俺と同じくらい嬉しそうな顔で葉書を見つめているヒロさんの、ふわりと柔らかい髪を見下ろす。
抱きしめると、抵抗もせずに俺の腕の中に納まってくれた。

「ねえ、ヒロさん。俺、昔はあなたよりうんと小さかったのに。」
「……。」
「今は俺の口があなたの額の高さにあります。」
「……っ。」
どうしてあなたは、と言いかけたとき、ヒロさんは身を翻すようにして姿を消した。


あなたはどうして出会ってからずっと姿が変わらないのですか。


***


「お前すごい人と知り合いなのな。」
「えっ?」

昨日からずっとヒロさんのことが頭から離れず学校でぼんやりとしていると、クラスメイトに話掛けられた。
「昨日お前が公園でいっしょにいた人。」
「ヒロさんを、知ってる……?」
ヒロさんについて結局何一つ、本当の名前も何も知らなかった俺は身を乗り出した。
お前何にも知らずにしゃべってたの、とからかわれるのにも構わず、何でもいいから教えてくれと頼んだ。
「上條家の跡取り御曹司だろ。お屋敷が近所にあるとは聞いてたけど、フツーに街歩いてるもんなんだな。」
彼が言うには、普通は俺らのような人間は顔も拝めないような人物なのだそうな。


「そういえば今度、婚約パーティがあるらしい。やっぱ庶民とは違うねー。」

ヒロさんは俺の知らない誰かの伴侶になるという。
自覚し始めたばかりの俺の恋心をずたずたに引き裂くには十分な衝撃だった。


***


「ヒロさん。上條、弘樹さん。」
黙って悲しそうにヒロさんは首を振った。
「あなたが何者でも構いません。だけど、俺は……。」
首筋にあたたかいものが触れた。

「ごめん、野分……。ごめん……。」
そう繰り返しながらヒロさんは俺の頬に口づけをした。
ヒロさんの顔を両手で包みこみ、ゆっくりと今度は唇同士を重ねる。


「……こうしてお前に会うのは今日が最後だ。」
「ヒロさんッ!!」
「ごめん、野分。俺はお前が好きだった。」
「俺もです。だからもっと俺と……!」

ヒロさんは少しだけ笑ってくれたけど、それでも俺は彼を引き留めることはできなかった。
今生の別れ、という言葉が頭をよぎった。



***


我ながらみっともないとは思うけれど、このままヒロさんをあきらめることはできなかった。
一目だけでも会いたい。
警備員の並ぶ建物の壁をよじのぼり、中庭に忍び込んだ。
奥には婚約パーティに招待された来賓たちが談笑しているのが見える。

ふと建物のバルコニーに目をやった。
「………!!」
来賓たちに囲まれて、そこにはヒロさんがいた。

その瞬間、ヒロさんの悲しそうな視線がぶつかった。
この時初めてわかったんだ。


俺たちは、今、初めて恋に落ちたんだと。


俺が口を開く前に、ヒロさんはバルコニーから身を投げた。
思わず目をつぶったけれど、そのまま何の物音もせず、ただヒロさんの姿だけが消えた。

異変に気付き騒ぎ始める人々。
呆然と立ち尽くす俺。

ヒロさんはどこへ行ったのか。
それは俺だけが知っている。
彼は時空の海へ身を投げたのだ。
自分が誰かのものになってしまう前に、俺と恋をするために。



この恋は永遠に成就することはない。

だけど俺たちは時間の波の中、繰り返し恋に落ちる。
繰り返し、何度も。





END






マリーンが好きなのです…。
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