絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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金曜の夜。
ソファーの前にあるローテーブルにはビールとつまみ。
原稿の進捗は……それなり。
そしてDVDをプレイヤーにセットした。
完璧だ。
本当はトリと映画館へ見に行く予定だったのが、寝過ごして結局見られなかった映画だ。
DVDになるまで待っていたら公開からだいぶ経ってしまった。
だからこうしてトリと二人でDVD鑑賞、というわけだった。
幸いにしてトリもそこそこの時間で会社から帰って来られて、無事に二人でこうして映画を見られるのが嬉しくてついはしゃいでしまう。
「やっぱりもっとお菓子買ってくればよかったかな?映画館みたいにポップコーンのでかいやつとか」
「前に買った時はお前途中で飽きて食べきれなかっただろう」
「そ、そうだったっけ……」
とりあえず落ち着けと言われてソファーに座ると、トリが部屋の明かりを落としてくれた。
隣にトリが座ると、ぎし、とソファーのスプリングが軋んだ。
映画は楽しみにしていただけあって面白い。
仕事のことは抜きにリフレッシュとして楽しもうと思ってはいたけれどこのシーンは漫画にも使えるかも?みたいなことを考えたりもして。
でも、それ以上に隣に座っているトリのことが気になってしまうのだった。
気になってしまうというかトリが雰囲気に乗じて手を出してくる可能性を思い浮かべてしまって頭から離れない。
テーブルの上のビールを取って一口飲んで戻す、その動作でさりげなくトリとの距離感をうかがってみたりして、自分の行動の恥ずかしさに一人赤面する。
付き合ってけっこう経っているしやることもしっかりやってるのに、中学生みたいなことをしてしまった。
でもトリはちゃんと俺の意図に気付いたのか、腰に手が回された。
場面はタイミングよくロマンチックな場面……と言いたいところだったけれど、選んだ映画はアクションファンタジーだったので画面で繰り広げられているのは敵国の大軍が土煙を上げて進軍してくるところだった。
手に汗を握りつつ、トリの体温がじわじわと伝わってくるのも感じる。
(あー……、ていうかトリが手出してきたら止められるかな……)
今のところ腰を抱かれているだけだけど、これからエスカレートする可能性がある。
可能性があるというか今までもパターンだとこのままソファーで押し倒される自分が簡単に想像できてしまう。
(それ自体は一応イヤじゃない、けど今は映画が気になるし)
いっそつまらない映画だったら良かったのかもしれないが、今見てる映画は面白いので困る。
さすがにトリもそこまで節操なしではないだろうという気持ちと、いや今まで自分がどうされてきたか考えてみろよという気持ちと、これじゃまるで期待してるみたいで恥ずかしいという気持ちがぐるぐるとする。
トリは心なしかさっきより体を寄せてきているような気がするし、映画の展開はめちゃくちゃ面白い。
そんなこんなで普通に映画を見る時の数倍は疲弊して、ついにエンドロールまで辿り着いたのだった。
「どうした、吉野?」
映画を見終わったあと、俺が複雑な表情でトリを見つめているのでそう尋ねられた。
「いや、ちょっと見直したと思って」
結局、トリは手を出してこなかった。
いちゃいちゃっぽいことはしていたので全くの杞憂というわけじゃなかったけれど、でも映画そっちのけで押し倒されるようなことはなかったので感心していたのだった。
「別に見直されるようなことはしていないと思うが」
「したんじゃなくてしなかったというか……」
ごにょごにょと手を出してくるかと思ったけどされなかったから感心していたということを説明すると、トリは少し嬉しそうな顔をする。
「まあそういう気にならなかったと言えば嘘だが映画が良かったからな。期待してたなら悪かった」
「違う、期待してたとかじゃなくて……」
慌てて否定する間もなく、トリの唇で口を塞がれてしまう。
舌の表面だけ合わせたあと、唇はすぐに離れていった。
じわりと顔が熱くなるのを感じる。
軽く頭突きをするようにトリの胸に顔を埋めると、優しく抱き寄せられた。
「さっきは別に心配してただけだっつの」
「そうか。じゃあ今は?」
「……期待、してる」
ああ、言ってしまった。
我ながらアホだと思うけれど、欲求に流されずに軽く触れるだけで留まってくれたトリのことを考えたらこいついい男だなと思ってしまったのだ。
顔を上げてトリと目を合わせるとさっきよりも深く口付けられて、金曜の夜はまだまだ終わらないのだった。
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