絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
一之瀬先生をあんまりイヤな役にしたくはないんですが、トリが千秋しか目に入っていない以上しょうがないのかな~とは思います。
たぶん一之瀬先生は羽鳥は吉川先生を甘やかしすぎって思ってるよね。
でもまったくその通りだよね。
しかし、まさかおしおきプレイに走るような男だとは思わないだろうね。
そんな感じで「続きを読む」からどうぞ。
あとプチ参加された方おつかれさまでしたー!
たぶん一之瀬先生は羽鳥は吉川先生を甘やかしすぎって思ってるよね。
でもまったくその通りだよね。
しかし、まさかおしおきプレイに走るような男だとは思わないだろうね。
そんな感じで「続きを読む」からどうぞ。
あとプチ参加された方おつかれさまでしたー!
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「お前もう一之瀬先生と付き合えばいいんじゃね?」
昔から柳瀬には散々不快なことを言われてきたが、一之瀬絵梨佳絡みのネタは本当にイライラする。
実際、『一之瀬先生は羽鳥に粉かけ過ぎ』と編集部でも頻繁にからかわれるが、柳瀬に言われると苛立ちは倍増だ。
一之瀬絵梨佳は美人でスタイルがよくて金持ちで才能がある。
これは事実だ。
実は家庭的とかマメだとかどうでもいい情報を耳にすることもある。
俺に気がある、というのも今の時点では否定できなさそうだ。
今日も相談があるという名目で彼女のお気に入りのバーに呼び出され、数杯酒に付き合った帰りだ。
こういうところを何度か目撃され、ついに付き合いだしたのだという噂へと変わるのだろう。
彼女はその噂も込みで、このデートごっこを楽しんでいるのだろう。
過去のヒット作で買ったのであろう高級マンションへと送り届けると、ぐったりと自宅へ戻った。
「このあとまた吉川先生のところに?」
別れ際、一之瀬絵梨佳は咎める風でもなくそう言った。
無論、俺が吉野のところへ行こうと行くまいと彼女に咎められる筋合いはないのだが。
「いえ、そういうわけでは」
適当に俺はごまかした。
「そう?私はてっきり吉川先生に門限を言い渡されてるのかと思って」
表情は相変わらず嫌味のない笑顔だ。
確かに吉川と打ち合せ、と称して一之瀬絵梨佳との約束を切り上げてきたことは多々あった。
逆に吉川千春とおかしな噂を流されても困るので、最近はあまりその言い訳を使わないようにしていたのだが、
「門限って年じゃないわよね、お互い」
若干手遅れだったようで、彼女には俺の最優先が常に吉川であると植え付けてしまったようだ。
もちろん、担当作家なのだから当然といえば当然だが、あまり込み入ったところまでは悟られたくない。
「また今度、時間を気にしないで飲みましょう?」
今度自宅にミニバーを作るから俺の好きなワインを用意しておく、と言われてしまった。
(……吉野の顔が見たい)
一之瀬絵梨佳に会ったあとは、いつも猛烈にそう思う。
タクシーでそのまま吉野の家に向かおうとも思ったが、彼女の香水の匂いが染み付いているのに気付いたので、自宅へ戻ることにした。
自分も大概一之瀬絵梨佳に振り回されるのにうんざりしているが、吉野の方も近ごろは嫉妬というやつを感じてくれているらしい。
それはそれで嬉しくないこともないのだが、やはり吉野を傷つけるようなことはしたくないのが本心だ。
自分が嫉妬に苦しむタイプだから、余計にそう思う。
やきもちから大喧嘩に発展することの多い俺たち二人に比べ、彼女は大人だと妙なところで感心してしまった。
俺が吉川千春の話ばかりをしていても、決して怒らずに聞いている。
だが笑顔で確実に次の約束をとりつける。
エリカ様はできる女だよ、と編集部の誰かが言っていたが、まさにその通りなのだろう。
山より高いだろう彼女のプライドは、彼女に乱れたり崩れたりすることを許さない。
うまく手綱をとれるのならば理想的な相手とも言えるのかもしれないが、
(こればっかりはどうしようもない)
俺が好きなのは、家事もできない、締切も守らない、鈍感で人見知りで子供っぽい吉野なのだ。
しょうがないだろう。
自宅の玄関を開けるとリビングには吉野がいた。
「おかえりー」
「来てたのか」
「カラーのチェックするって言ってたじゃん。早めにできたから持ってきた」
珍しく吉野が仕事を早く仕上げて俺の部屋で待っているなど、普段では喜ぶべきシチュエーションなのだろうが、
「……トリ、すげー香水の匂いするんだけど」
今日ばかりはタイミングが悪いと言わざるをえない。
「また一之瀬先生かよ。……あっ、一応言っとくけど別に妬いてるとかそんなんじゃないからなっ」
こちらとて別にやましいことはないのだが、慌てて言い繕う吉野を見るとやはり心が痛い。
「風呂!風呂わかしてあるから!スーツはその間に俺がファブっといてやる!」
言い訳の間も与えられぬままバスルームに追いやられた俺は、ざかざかとシャワーを浴びてリビングへ戻った。
「吉野、お前何してるんだ……」
リビングで目の当たりにした光景に俺は頭を抱えた。
消臭剤のスプレー容器のフタを外した吉野が、直接液体を俺のスーツにかけようとしていた。
「えっ。いや、吹き掛けるだけじゃ匂い取れないかと思って」
「俺のスーツをびしょ濡れにする気か」
「あ、やっぱやり過ぎだった?」
あははと笑う吉野の手からスーツを奪うと、自分で存分にスプレーをして窓際に掛けた。
たまにこういう突拍子もないことをやりだすので、目が離せない。
「こんなに香水つけて自分でむせたりしないのかね?マーキングじゃねーっつーの」
「すまん、本当はもっと早く切り上げたかったんだが」
まだ少し機嫌の直っていない吉野の頭に手を置く。
少し照れたような吉野は俺の手をかいぐぐるようにしてキッチンの方に逃げた。
「あーあ、せっかくワイン持ってきてやったのになー」
キッチンからすぐに吉野は戻ってきた。
手にはワインのボトルと皿を持っている。
「酒はもういらない?」
「いや、飲む」
ならよかった、と吉野はテーブルの上にワインと何かの乗った皿を置いた。
ちょうど俺も吉野と飲みなおしたい気分だった。
「やっぱワインといえばチーズじゃね?と思って買ってきた」
それは殊勝なと思って皿の上を見て、思わず顔を顰めてしまった。
チーズと呼ばれた大小の物体が不規則に皿の上に散らばっている。
「チー…ズ…?」
「いやー、柔らかくて切りにくいからちょっとぐちゃぐちゃになっちゃって。食えるからいいだろ?!」
「チーズを乱切りにした奴は初めて見たぞ」
「うるさい!!!」
雰囲気だけでも、と食器棚から普段は使わないようなワイングラスを引っ張り出してきて、二人で乾杯した。
おつかれさま、と言い合ってカチンとグラスをぶつける。
形も大きさもバラバラのチーズは吉野らしくて、小綺麗に切ってある市販品よりも美味しいように感じた。
「やっぱ一之瀬先生と飲みに行くとすごいワインとか出てくんの?」
「まあな」
「だよな~。さっすが大先生というか」
「今はお前が『大先生』だろ?」
「俺はそーいうのムリだもん。フォーマルな場所とか高級レストランとかバーとか苦手だし、正直いまだに先生って呼ばれんのも慣れん」
だらりとソファーにもたれかかって吉野が言う。
その言葉はまさに本音なのだろう。
エメラルドの看板作家になって大ヒットを飛ばしても、やりたいこと、したいことは学生の頃からほとんど変わらないのではないか。
豪邸も車もいらないけど、漫画読んで休みがあってごろごろできればそれでいいと吉野はよく言っている。
「ファンが一之瀬先生見たら『さすが先生!』って言いそうだけど、俺見たらたぶんファンの子みんながっかりするんじゃないのかね」
自嘲的に吉野が笑った。
まあ確かにチーズ一つまともに切れない男だとは思うまい。
「お前はそれでいいの?」
急に吉野に見つめられた。
顔はしっかりこっちを向いているが、視線は少し戸惑っている。
「何がだ?」
ワインのせいか吉野の顔は赤く火照っている。
しばらく口ごもったが、吉野は怒ったように口調を荒げた。
「だから!お前はそんな俺でもいいのかって聞いてんだよ!!」
「当たり前だろう」
吉野の頭を胸の辺りに抱きかかえた。
「よくなかったら、今ここにはいない」
世間一般の評価なんてどうでもいい。
俺はそんな吉野が好きで、どうしようもなくて、だから傍にいることを選んだのだ。
「……ありがと」
小さくそう呟くと、吉野はおとなしく俺に頭を預けてきた。
その頬に手をかけて顔を上げさせると、軽く唇を吸う。
ギリギリで理性を手放さなかった吉野はデコピンをしてそそくさと腕の中から逃げ出した。
少し残念だが、口直しとしては今日のところはこれで十分だ。
お互い一杯ずつグラスを空にすると、忘れないうちに仕事の打ち合わせに戻った。
相変わらずの口論ではあるけれど、いつもよりほんの少し吉野が俺の話を素直に聞いてくれているように感じる。
できる女とできない男を天秤にかけて、後者に惚れ込んでしまったのが俺なのだ。
こうやって幸運にも隣にいる権利を得たのだから、せいぜい一生甘やかさせてほしいものだ。
そんなことを考え、吉野に気付かれないようこっそりと笑った。
END
昔から柳瀬には散々不快なことを言われてきたが、一之瀬絵梨佳絡みのネタは本当にイライラする。
実際、『一之瀬先生は羽鳥に粉かけ過ぎ』と編集部でも頻繁にからかわれるが、柳瀬に言われると苛立ちは倍増だ。
一之瀬絵梨佳は美人でスタイルがよくて金持ちで才能がある。
これは事実だ。
実は家庭的とかマメだとかどうでもいい情報を耳にすることもある。
俺に気がある、というのも今の時点では否定できなさそうだ。
今日も相談があるという名目で彼女のお気に入りのバーに呼び出され、数杯酒に付き合った帰りだ。
こういうところを何度か目撃され、ついに付き合いだしたのだという噂へと変わるのだろう。
彼女はその噂も込みで、このデートごっこを楽しんでいるのだろう。
過去のヒット作で買ったのであろう高級マンションへと送り届けると、ぐったりと自宅へ戻った。
「このあとまた吉川先生のところに?」
別れ際、一之瀬絵梨佳は咎める風でもなくそう言った。
無論、俺が吉野のところへ行こうと行くまいと彼女に咎められる筋合いはないのだが。
「いえ、そういうわけでは」
適当に俺はごまかした。
「そう?私はてっきり吉川先生に門限を言い渡されてるのかと思って」
表情は相変わらず嫌味のない笑顔だ。
確かに吉川と打ち合せ、と称して一之瀬絵梨佳との約束を切り上げてきたことは多々あった。
逆に吉川千春とおかしな噂を流されても困るので、最近はあまりその言い訳を使わないようにしていたのだが、
「門限って年じゃないわよね、お互い」
若干手遅れだったようで、彼女には俺の最優先が常に吉川であると植え付けてしまったようだ。
もちろん、担当作家なのだから当然といえば当然だが、あまり込み入ったところまでは悟られたくない。
「また今度、時間を気にしないで飲みましょう?」
今度自宅にミニバーを作るから俺の好きなワインを用意しておく、と言われてしまった。
(……吉野の顔が見たい)
一之瀬絵梨佳に会ったあとは、いつも猛烈にそう思う。
タクシーでそのまま吉野の家に向かおうとも思ったが、彼女の香水の匂いが染み付いているのに気付いたので、自宅へ戻ることにした。
自分も大概一之瀬絵梨佳に振り回されるのにうんざりしているが、吉野の方も近ごろは嫉妬というやつを感じてくれているらしい。
それはそれで嬉しくないこともないのだが、やはり吉野を傷つけるようなことはしたくないのが本心だ。
自分が嫉妬に苦しむタイプだから、余計にそう思う。
やきもちから大喧嘩に発展することの多い俺たち二人に比べ、彼女は大人だと妙なところで感心してしまった。
俺が吉川千春の話ばかりをしていても、決して怒らずに聞いている。
だが笑顔で確実に次の約束をとりつける。
エリカ様はできる女だよ、と編集部の誰かが言っていたが、まさにその通りなのだろう。
山より高いだろう彼女のプライドは、彼女に乱れたり崩れたりすることを許さない。
うまく手綱をとれるのならば理想的な相手とも言えるのかもしれないが、
(こればっかりはどうしようもない)
俺が好きなのは、家事もできない、締切も守らない、鈍感で人見知りで子供っぽい吉野なのだ。
しょうがないだろう。
自宅の玄関を開けるとリビングには吉野がいた。
「おかえりー」
「来てたのか」
「カラーのチェックするって言ってたじゃん。早めにできたから持ってきた」
珍しく吉野が仕事を早く仕上げて俺の部屋で待っているなど、普段では喜ぶべきシチュエーションなのだろうが、
「……トリ、すげー香水の匂いするんだけど」
今日ばかりはタイミングが悪いと言わざるをえない。
「また一之瀬先生かよ。……あっ、一応言っとくけど別に妬いてるとかそんなんじゃないからなっ」
こちらとて別にやましいことはないのだが、慌てて言い繕う吉野を見るとやはり心が痛い。
「風呂!風呂わかしてあるから!スーツはその間に俺がファブっといてやる!」
言い訳の間も与えられぬままバスルームに追いやられた俺は、ざかざかとシャワーを浴びてリビングへ戻った。
「吉野、お前何してるんだ……」
リビングで目の当たりにした光景に俺は頭を抱えた。
消臭剤のスプレー容器のフタを外した吉野が、直接液体を俺のスーツにかけようとしていた。
「えっ。いや、吹き掛けるだけじゃ匂い取れないかと思って」
「俺のスーツをびしょ濡れにする気か」
「あ、やっぱやり過ぎだった?」
あははと笑う吉野の手からスーツを奪うと、自分で存分にスプレーをして窓際に掛けた。
たまにこういう突拍子もないことをやりだすので、目が離せない。
「こんなに香水つけて自分でむせたりしないのかね?マーキングじゃねーっつーの」
「すまん、本当はもっと早く切り上げたかったんだが」
まだ少し機嫌の直っていない吉野の頭に手を置く。
少し照れたような吉野は俺の手をかいぐぐるようにしてキッチンの方に逃げた。
「あーあ、せっかくワイン持ってきてやったのになー」
キッチンからすぐに吉野は戻ってきた。
手にはワインのボトルと皿を持っている。
「酒はもういらない?」
「いや、飲む」
ならよかった、と吉野はテーブルの上にワインと何かの乗った皿を置いた。
ちょうど俺も吉野と飲みなおしたい気分だった。
「やっぱワインといえばチーズじゃね?と思って買ってきた」
それは殊勝なと思って皿の上を見て、思わず顔を顰めてしまった。
チーズと呼ばれた大小の物体が不規則に皿の上に散らばっている。
「チー…ズ…?」
「いやー、柔らかくて切りにくいからちょっとぐちゃぐちゃになっちゃって。食えるからいいだろ?!」
「チーズを乱切りにした奴は初めて見たぞ」
「うるさい!!!」
雰囲気だけでも、と食器棚から普段は使わないようなワイングラスを引っ張り出してきて、二人で乾杯した。
おつかれさま、と言い合ってカチンとグラスをぶつける。
形も大きさもバラバラのチーズは吉野らしくて、小綺麗に切ってある市販品よりも美味しいように感じた。
「やっぱ一之瀬先生と飲みに行くとすごいワインとか出てくんの?」
「まあな」
「だよな~。さっすが大先生というか」
「今はお前が『大先生』だろ?」
「俺はそーいうのムリだもん。フォーマルな場所とか高級レストランとかバーとか苦手だし、正直いまだに先生って呼ばれんのも慣れん」
だらりとソファーにもたれかかって吉野が言う。
その言葉はまさに本音なのだろう。
エメラルドの看板作家になって大ヒットを飛ばしても、やりたいこと、したいことは学生の頃からほとんど変わらないのではないか。
豪邸も車もいらないけど、漫画読んで休みがあってごろごろできればそれでいいと吉野はよく言っている。
「ファンが一之瀬先生見たら『さすが先生!』って言いそうだけど、俺見たらたぶんファンの子みんながっかりするんじゃないのかね」
自嘲的に吉野が笑った。
まあ確かにチーズ一つまともに切れない男だとは思うまい。
「お前はそれでいいの?」
急に吉野に見つめられた。
顔はしっかりこっちを向いているが、視線は少し戸惑っている。
「何がだ?」
ワインのせいか吉野の顔は赤く火照っている。
しばらく口ごもったが、吉野は怒ったように口調を荒げた。
「だから!お前はそんな俺でもいいのかって聞いてんだよ!!」
「当たり前だろう」
吉野の頭を胸の辺りに抱きかかえた。
「よくなかったら、今ここにはいない」
世間一般の評価なんてどうでもいい。
俺はそんな吉野が好きで、どうしようもなくて、だから傍にいることを選んだのだ。
「……ありがと」
小さくそう呟くと、吉野はおとなしく俺に頭を預けてきた。
その頬に手をかけて顔を上げさせると、軽く唇を吸う。
ギリギリで理性を手放さなかった吉野はデコピンをしてそそくさと腕の中から逃げ出した。
少し残念だが、口直しとしては今日のところはこれで十分だ。
お互い一杯ずつグラスを空にすると、忘れないうちに仕事の打ち合わせに戻った。
相変わらずの口論ではあるけれど、いつもよりほんの少し吉野が俺の話を素直に聞いてくれているように感じる。
できる女とできない男を天秤にかけて、後者に惚れ込んでしまったのが俺なのだ。
こうやって幸運にも隣にいる権利を得たのだから、せいぜい一生甘やかさせてほしいものだ。
そんなことを考え、吉野に気付かれないようこっそりと笑った。
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