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絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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片思い時代でウサヒロ成分多めです。
ちょっと病んでるっぽい感じ。


「続きを読む」からどうぞ。

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+ + + + + + + + + +
いっそ兄弟だったらどんなに楽かと何度考えたか知れない。


ヒロイン願望のようなものがあるわけではないと思うが、許されざる恋という言葉に憧れた。
夢見がちな女の子のそれではなく、もっと後向きな願望だ。
身分違いの恋、種族を越えた恋、何でもいい。
それが最初から『許されない』とわかっているのなら。


秋彦とずっと友達でいられればいい。
幼い頃はなんとなくそう思っていた。
口に出して言うのはだいぶ照れるけれど、その願い自体は別に恥じるものではなかったと思う。
気付けば秋彦は俺の隣にいて、そんな距離感がずっと続くものだと思っていた。

このささやかな願いの足枷となったのは、俺自身の秋彦への恋心だった。

俺は途方に暮れた。
どうして友達同士の『好き』で止まれなかったのだろう。
どうやったら友人以上の関係になれるというのだろう。
それでも最初の頃は、自分の気持ちに対して少しタカをくくっていた。
(どうせ男同士なんだ。)
そんなのダメに決まってる。
世間的に許されなければそのうちあきらめもつくはずだ。
そんなことを思っていたのだが、すぐに俺は打ちのめされることになる。

秋彦が好きになった相手も男だったのだ。

もしもの話をいくらしても意味はないだろうが、もしも秋彦の思い人が女性だったら。
そしたら俺は全てをあきらめられたかもしれないと思うのだ。
男が女性と結ばれるのはごく当然のことで、俺の入り込む余地はない。
寂しいし、悲しいだろうけど、受け入れられたんじゃないかと思う。
だけど秋彦の片思いの相手が男だとわかった時。
俺は死ぬほど考えた。
あいつが俺ではなくその男を好きになった理由を。

どうしてあの男なんだ?
どうして、俺ではなく。

秋彦に片思いについて真剣に話をされるたび、時に茶化し、時に慰め、励ましながら、それでも俺は頭の中でずっと考え続けていた。
「あいつを見て、俺は初めて人を美しい生き物だと思った。」
秋彦はこう言っていたことがある。
「悪かったな、きたねー生き物で。」
「いや、弘樹は弘樹で特別なんだがな。」
「……ふーん。」
その言葉自体は嬉しかったけれど、秋彦が好きになったのが俺ではなく彼だという事実が納得できる理由にはならなかった。




昔からよく俺と秋彦は兄弟みたいだと言われてきた。
(とくに俺の母親からよく笑いながらそう言われた)
確かに小さい頃隣に越してきた秋彦に出会ってからずっといっしょにいて、学校でもいっしょ、帰ってもいっしょ、本好きという趣味までいっしょという有様だ。
ただし背格好はあまり変わらないと思っていたのだが、中学くらいから秋彦にしっかり背を追い越されてしまった。
だけど俺からしてみれば秋彦は少し生意気な弟みたいに思っていたところもあったし、逆に秋彦に兄貴面されるのも嫌いではなかった。
端から見ればそれくらい仲がよさげに見えるのだろう、くらいの認識はあった。
だけど俺と秋彦のそれぞれの片思いのバランスが崩れた時に、俺は真剣にため息をついた。

もし本当に兄弟だったなら、この恋は完璧な「許されざる恋」だったのに。

まるでブラザーコンプレックスだ、と誰かに言われたことがあるような気がする。
『もし、その仲良しの秋彦君が誰か知らない人のものになっちゃっても平気なワケ?』
そう言ってからかわれた。
言った本人に言葉以上の他意はなかったと思われる。
『他人のものも何も、別に俺のもんじゃねーし。』
突き放すように俺は軽く返したけれど、自分の言葉はそのまま俺の心に突き刺さった。

秋彦は俺の所有物なんかじゃない。
だからこそ俺は秋彦が欲しかった。
秋彦の一番特別な人間になりたかった。

言われてみれば確かにブラザーコンプレックスのようだ、と俺は自嘲的に笑った。
俺と秋彦はあまりに近過ぎる。
だから兄弟でこそないものの、恋愛対象の圏外なのだろう。
とても中途半端で苦しい距離だった。



許されざる恋は身の破滅を招くと相場は決まっている。
だからこそ俺は人魚姫が羨ましかった。
あれは最初から叶わない恋だと分かりきっているのだ。
生きてきた環境も違う。
種族も違う。
想い人には将来を約束した相手がいる。
好きだという気持ちすら伝えることができない。
それなのに幼い人魚姫は身勝手な恋に焦がれて、一人海の泡となって消えてゆく運命を選んだ。
この悲劇に対して俺はネガティブな感想を持った。
あのまま王子とそのフィアンセが幸せになるのを傍でただ見守り続けるよりも幸せな結末ではないか、と。
たぶん王子はどうして人魚姫が姿を消したのか一生気付くことはないのだろうけど、人魚姫は王子への恋に生きたという満足感を抱いて天国に行けるのだ。


破滅を招く恋など、そうそう転がっているものじゃない。
だから、俺は試してみようと思った。
本当に俺と秋彦は結ばれない運命なのかどうかを。


秋彦に目隠しをしながら、これは賭けだと思った。
戸惑いながらもされるがままの秋彦は、俺の気持ちになど微塵も気付いていない、自分の想い人しか見えていない王子様だ。
そして俺は、そんな秋彦が欲しくてたまらない滑稽な脇役。
身体を重ねて、ほんの欠片でも秋彦が俺の気持ちに気付いてくれたら、まだ望みはある。
片思いの相手に振られた時にでも、俺のことを思い出してくれればいい。

だけど本当にこれが絶対に叶わない恋だったら?
その時はこの思いも、俺の身体ごと滅んでしまえばいい。
焦がれ死に、馬鹿馬鹿しくて結構じゃないか。
どうせ秋彦は俺がどうして死んだかなんて一生気付かないのだろう。
それでいい。
所詮、恋なんて自己満足の産物なのだから。


絶頂を迎えると同時にこの身がバラバラに砕け散るところを想像して、俺は身体を震わせた。
秋彦の冷たい手は、俺を葬送の道へ誘っているようだ。
冷えきった俺の思考回路とは裏腹に身体だけがたまらなく熱く、まるで最期の逢瀬だと一人悦に入っていた。
(好きだ、好きだ、好きだ。)
教えてほしい、俺はこの恋をどう処理すればいいのか。
あきらめられないのなら、俺の存在ごと消して最初からなかったことにしてほしい。


だけどそんなエゴが通用するのは結局お伽話の中だけで、
俺の身体は砕け散ることも海の泡と化すこともなく、秋彦は相変わらず優しい友人のままだった。
そして俺は、これが許されざる恋などという大層なものではなく、単に俺が秋彦に選ばれなかった惨めな人間なだけだと悟ることとなった。



甘い悲劇のヒロイン気取りだった自分を恥じても、秋彦の身体も心も一番最悪な方法で汚してしまったという事実は元に戻らない。
秋彦の心を自分勝手な思いで踏み付けた代償はさぞ大きいことだろう。

ぐいと内腿の汚れを拭い取って、秋彦の背中から目を背けた。
あいつは何も言わずに、俺が部屋を出るまで黙って身繕いをしていた。
秋彦、お前はもっと俺に酷くしてくれてもいいというのに。
優し過ぎるお前の呪いは、この先俺が死ぬことも、この恋をあきらめることも許さない。


俺は人魚姫が羨ましい。

人魚姫のように自分勝手な恋がしたい。
人魚姫のようにわがままな死に方がしたい。










END
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