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絵とか文のBL2次創作サイト(純エゴ、トリチア、バクステの話が多いです)
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・ソラ太視点→横澤さん
・ソラ太がしゃべらないのをいいことに捏造し放題
・横澤×高野
・高野さんが荒れてるっていうか病んでる

…と注意書きの多い話ですいません。
大丈夫な方は「続きを読む」からどうぞ。

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+ + + + + + + + + +
つらい恋ならやめてしまえばいいのに。

もし自分がしゃべることができたら、迷わずあいつにそう言ってやる。



がちゃ、とドアが開く音が聞こえたので、丸まって寝ていたクッションから飛び起きて帰ってきた隆史に駆け寄った。
そのまま足元に擦り寄ると、隆史のタバコの匂いの他に政宗のタバコの匂いもした。
ただいまソラ太、と頭を撫でてくれる声がやけに弾んでいるのは、きっとさっきまで政宗といっしょにいたせいだと思う。
もしかしたらドアの向こうに政宗もいるかもしれないと思ったけれど、今日は隆史一人らしい。
最近めっきり政宗が自分の顔を見にきてくれる回数が減った気がする。
はくじょうもの、と心の中で政宗を罵った。
(友達少ないくせに。)
自分と隆史を除いたら他に何人友達がいるというのだ。
少なくとも政宗が自分に引き合わせた人間は隆史くらいだ。
……と、あともう一人いるようないないような。

まあ別に政宗が自分の顔を見にくるのをおろそかにしても一向に構わないんだけど、
それで寂しがるのは俺じゃなくて隆史の方なのだ。


着替えを済ませてきた隆史が、スーパーの袋から惣菜とビールを取り出して晩ご飯を食べ始めた。
自分にも自分にも、と鳴いてやると、サラダに乗っていたささみを分けてくれた。
冷たくて柔らかいささみにかじりつくと、隆史がバカにしたように笑った。
「次政宗に会った時に、また太ったって言われないようにな。」
余計なお世話だ。
食べかけのささみを一気に完食し、隆史に向かってげっぷをした。


帰ってきた時は機嫌がよさそうだと思ったけれど、よく見ると今日はビールの本数が多い。
そういえば晩ご飯の前までは酒の匂いはしなかったから、政宗と飲みに行っていないようだ。
ビールを一缶あけてはため息をつく隆史。
(……ふられたな。)
どうも最近そっけないのは自分に対してだけではないらしい。





政宗が隆史と知り合ったのは、政宗が最悪な生活をしていた頃だった。
自分を拾ってくれた高校生の頃は確かに家のことでイライラしていたことも多かったけど、それでも落ち着いていた方だったと思う。
自暴自棄なんていう言葉からは程遠かったし、家のことも別にあきらめたような風で、政宗は自分のしたいことをしているように見えた。


ある日を境に政宗は荒れた。


大学生なのだから、自分のためにエサとトイレ掃除さえ忘れなかったら夜遊びだろうが朝帰りだろうが好きにすればいい。
だけど、その頃の政宗からはとてもイヤな匂いがした。
どこに行ってるんだか知らないが、毎日違う人間の匂いをこびりつかせて帰ってきた。
好きな本や漫画にも手を伸ばそうとしない。
自分のエサは忘れずにいてくれたけど、政宗自身はお酒ばかり飲んでいてほとんど食事は摂らなかった。
たまに食べては、吐いた。
そんな生活をしていれば、当然顔色は悪くなり、なんだかふらふらしてくる。
だけど政宗は遊ぶのを止めなかった。
時々一日中部屋に籠もっている日もあって、そういう時の政宗は魂が抜けたような表情で暗くなるまでうずくまっていた。
そんな政宗をこわいと思うこともあったけれど、自分から体を寄せればちゃんと冷えきった手のひらで頭を撫でてくれた。



隆史が初めて政宗の部屋にあがり込んできたのはいつ頃だっただろう。
いつも政宗が染み付かせていた人間の匂いとは全然別の匂いがした。
当時は隆史の怒鳴り声ばかり聞いていたような気がする。
「そんな生活してたら死んじまうっつってんだろうが!!」
「誰がどこで野垂死のうがてめーにゃ関係ねーだろ!!」
政宗の怒鳴り声も、この時久しぶりに聞いた。
だけど威勢よく声を張り上げているように見えても、体力はほとんどゼロの状態だ。
隆史に一発頬を張られて、ベッドに沈み込んだ。
政宗は目元を隠すように両腕で顔を覆った。
「……ほっとけばいいだろ、他人のことなんか……!」
まるで悲鳴のように政宗が呻く。
それを冷ややかに隆史は見下ろして言った。
「ほっとけねえから来てんだろ、馬鹿。」
そのあと隆史は部屋にあったお酒を全部流しに捨て、近くのコンビニから食料を買いこんできた。
無理矢理ベッドに寝かしつけた政宗は、それを表情のない顔で見つめていた。

「大学の方は俺が何とかしてやるから、お前は食って寝て体調戻せ。」
「……いらねえ。」
「ヤリ過ぎじゃ死なないかもしれないけど、食わねえと人は死ぬぞ。」
「俺はいいから、ソラ太にエサやって。」
ソラ太?と振り返った隆史と目があった。
「こいつのことか?」
隆史の方を見て、飯をくれ、と一鳴きしてやった。
やれやれ、と隆史はエサを用意してくれた。



それから隆史は毎日政宗の部屋にやって来た。
食べ物を買ってきたり、自分のエサの用意をしてくれたり、政宗と喧嘩をしたり。
隆史のおかげで部屋の状態はだいぶマシになったけど、相変わらず政宗は隆史の用意した食事に手をつけようとはしなかった。
いつものように風呂を沸かして政宗を放り込んだあと、隆史はエサを食べている自分にしゃがみこんで話し掛けてきた。
「なあ、お前はあんな政宗の傍にいて平気か?」
平気か平気でないかと聞かれれば、平気だと答えるだろう。
政宗を見ているのがつらい時もあるけれど、ネコには見たくないものを見ないという選択をすることもできる。
「そのうちに、お前を俺の家に引き取ろうかと考えてる。」
「……。」
これは少し考えてしまった。
政宗に拾われてから、他の人間と暮らすことは考えたことがなかった。
終の住処なんて言葉はネコには似合わないかもしれないけど、なんとなくずっと政宗のところにいるものだと思っていた。
今の政宗の生活は荒れているけれど、別に自分にひどくするわけじゃない。
ちゃんとエサもくれる。

でも、隆史と暮らすのもいいかもしれない。

隆史にはそう思わせる何かがあった。
無理にでも連れて帰ろうとされたとて、自分は別に抵抗しないんじゃないかと思う。
(政宗はどう思うかな。)
寂しがるかな。
それともどっちでもいいと言うかな。


……それに、自分は政宗の目の前にいない方がいいかもしれないし。

そう思うだけの心当たりも少しあった。



その日も政宗と隆史は喧嘩をしていたけれど、隆史の剣幕がいつもと違った。
自分はお腹がすいて元気がなかったので、キッチンで丸くなっていた。

「そんなにそいつのことが忘れられないって言うのか!!」
「……黙れ。」
「忘れられないのはいいが、こんな誰彼構わず寝るようなことやってても何の解決にもなりゃしねえだろ!!!」
「黙れって言ってるだろうが!!」
ここしばらくはおとなしく隆史の言うことに従うことの多かった政宗も、声を荒げていた。
たぶん、政宗の一番触れてはいけないところに隆史は踏み入ろうとしている。


「じゃあ、俺が抱く。」

「は……?横澤、お前何を……」
「そいつのこと忘れられるまで俺が抱いてやる。だからお前はさっさと全部忘れちまえ。」


隆史の声は真剣だった。
やっぱりこうなったか、と自分は妙に冷静な気持ちで二人の声を聞いていた。
隆史は政宗の友達だと言っていたけど、ただの友達があそこまでしてくれるだろうか?
政宗本人はもしかしたら気付いていないかもしれないけれど、たぶん、隆史は本気で政宗のことを。


「……いらねーんだよ、そういうの。」
「政宗、」
「同情なんかで人のこと抱こうとしてんじゃねえよ!俺はもう何も信じられない!!」
「俺は、お前を絶対に裏切ったりはしない。」
「……ッ!」

「お前が誰かのことを信じられるようになるまで、俺はここにいてやる。」

そこで二人の怒声は耐え、政宗の啜り泣くような声が聞こえてきた。



しばらくしてから政宗はシャツ一枚羽織っただけの格好でキッチンへやって来て、
初めて隆史が用意した食事を全部たいらげたのだった。





その後、言った通りに隆史は自分を引き取った。
そして久しぶりに政宗に会ったら、政宗は元の政宗に戻っていた。
自分の見ていないところで二人に何があったかは知らないが、政宗の血色はいい。
一応、一安心といったところか。


政宗は言った。
「横澤は頑固でしつこくてめんどくせー奴だけど、いい奴だから可愛がってもらえ。」
そう言って昔のように暖かい手で撫でてくれた。



政宗と隆史は友達以上にはならなかった。
それは二人がつけたけじめなんだろうから、自分がやいやい言えることじゃない。
だけど今晩みたいに隆史が一人でお酒を飲んでため息をついているのを見てしまえば、
(かわいそうに。)
結局吹っ切ることのできていない隆史に、どうしても同情を禁じえない。
政宗が立ち直ったということはつまり隆史に依存しなくてもよくなったということで、たいへん結構なことなのだけど、
まあ、ちょっとさびしいよねえ、とそんな隆史を見ながら思ってしまう。


缶ビールを数本空けたけどうまく酔い切れずにベッドに向かった隆史の隣へ、素早く潜り込む。
肩口に顔面をこすりつけて、甘えている風を装った。

(今だけ自分のことを『政宗』って呼んでもいいんだぜ?)

そう言ってやったけど、隆史は同情は要らないとばかりにあっさり寝てしまった。


隆史が自分を引き取ったのは心配してくれたのもあるんだろうけど、政宗との繋がりを手放したくなかったんじゃないかと思う。
政宗の前では聞き分けのいい顔をして友達に戻ったくせに、未だに未練は捨てきれないらしい。
いつかの隆史が言ったように、誰かに忘れてしまえと言われたらこの執着を捨てられるんだろうか。
つらい恋なんてやめてしまえば、それなりに幸せになれるんだろうに。


つくづく損な性分だけれど、とりあえず自分だけは傍にいてやろうじゃないか、と隆史の腹の上で丸くなって目を閉じた。







END
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